檀 さま

                                                                                                                                                              • -

陸山会の平成16年分の収支報告書によると、前年、平成15年からの繰越額が151,229,466円で、平成16年の収入額が580,024,645円、支出額が121,202,731円で、その結果610,051,380円を翌年、平成17年に繰り越しています。平成16年の収入額には、小澤一郎個人からの400,000,000円が含まれていますで、これを除く収入額は、180,024,645円であったということになります。

仮にこの年間の収入が、全て10月29日正午までに入金したとし、年間の支出が、全て10月29日の正午以降に出金したと仮定すると、10月29日正午における資金量は、151,229,466円+180,024,645円=331,254,105円より少い額であったということが分かります。

つまり、逆立ちをしても、陸山会は、本件土地の代金、342,640,000円を、10月29日の午前中に支払うことはできなかったのです。仮に不足分を借入金等で支払ったとするなら、収支報告書の数字は、それによって、また大きく変化するはずですから……。したがってこのことは動かしがたい事実なのですから、真実の解明は、しっかりとこの事実から出発しなければなりません。

陸山会として本件土地を取得したいという石川氏の意思に従って、まず平成16年10月5日に、売主と陸山会代表、小沢一郎との間で売買契約書が交わされ、10,000,000円の手付金が支払われています。したがってこの日が売買の予約日ということになります。残金の332,640,000円は、平成16年10月の実質的な月末である29日金曜日までに決済することが約定されました。

ところが陸山会には資金がありません。そこでこの日に交わされた売買契約書を銀行に提示して、小澤一郎個人で4億円の融資を申し込んだのです。この融資が29日の午前中までに実行されていれば、この4億円を小澤一郎個人から陸山会に転貸してもらうことによって、陸山会として残金を決済できるというのが、石川氏の目論見だったのでしょう。

残念ながらこの融資の実行は、29日の午後になってしまいました。午前中に決済をしなければ、登記をその日のうちに済ませることができなくなります。決済ができない場合は、売買総額の10%相当額の違約金を払うということも、売買契約書の中に書かれています。結局この日の残金の決済は、小澤個人の資金で支払うことになったのです。

この日に行った登記は、所有権移転の本登記ではなく、所有権移転請求権仮登記になっていますが、その権利者は、小澤一郎個人となっています。そして石川氏の要望により、本登記を平成17年1月7日にすることを、売主との間で合意したのです。この合意は、検察も把握していることですが、それにもかかわらず検察は、何としても「期ずれ」を捏造したいために、平成16年10月29日に売買が行われたと言い募っているのです。

実は、本件土地に関して、「売渡証書(権利証)」と題する次のような書面が見つかっています。そこには、次のように書かれています。

「私は、私所有の後記不動産を平成壱六年壱〇月弐九日貴殿に売渡しました。

ついては、当該不動産の権利関係について万一他から故障等を申し出る者があった場合は、私の全責任において処理し、貴殿に対し些かのご迷惑もおかけしないことを保証します。

よって後日のため、本証書をお渡しします。

平成壱六年壱〇月弐九日

                     売渡人

 買主 東京都港区赤坂二丁目壱七番壱弐号 チュリス赤坂七〇壱号

       陸山会

   代表 岩手県水沢市袋町弐番参八号

       小 澤 一 郎  様」

 はっきりと。、成16年10月29日に売り渡しました、と書かれているのです。この書面の存在は、私を苦しめた難易度の高いクイズでした。結局この文書は、10月29日に備えて売主によって準備されたものではあるが、結局買主側に手交されたものではないという判断に達しました。石川氏の申し出によって、売買の日を平成17年1月7日にすることが合意されたからです。

検察が言うように、平成16年10月29日に売買が行われているのであれば、平成17年1月7日に売買が行われたことを原因として所有権移転登記をしたことは、政治資金規正法違反の虚偽記載という形式犯だけではなく、5年以下の懲役または50万円以下の罰金を課される「電磁的公正証書原本不実記載」という、本格的な犯罪になります。しかも登記の申請は、売主と買主が共同で行う定めになっていることから、この公正証書原本不実記載は、買主だけでなく、売主をも裁く犯罪であるということになります。

仮に検察が言うように、意図的な「期ずれ」であるとするならば、検察は、売主が「電磁的公正証書原本不実記載」という犯罪を犯してまで、何のメリットがあって「期ずれ」に手を貸したというのでしょうか。

何としてでも小沢を潰したい、そのための階段である石川を徹底的に叩きのめしたいと飢えている検察が、形式犯ではなく本格的な犯罪として叩ける事実を見逃すことは考えられません。ところが検察がいう被疑事実の中に、「電磁的公正証書原本不実記載」は見当たりません。なぜでしょうか。平成16年10月29日に売買されているという証拠を検察が見つけられなかったということになるではありませんか。

つまり、検察自身が、「期ずれ」はなかったということを立証しているのです。となると、「期ずれ」は不当な言いがかりであること、したがって石川逮捕はきわめて悪質な不当逮捕であり、起訴は検察そのものによる非道な捏造であることを、、検察自身が見事に立証しているということになります。まさに、「天に唾すれば……」ではありませんか。

では石川氏と売主は、どうして10月29日の時点で本登記を行わず、仮登記にし、翌年1月7日に本登記を行うとする合意を交わしたのでしょうか。

まず頭に浮かぶのは、農地法第5条との関係です。本件土地の地目は、登記簿謄本を見れば分かるとおり、畑、すなわち農地です。しかも現在の所有者が、耕作者ではない不動産業者であることから、農地は農地でも、市街化区域の畑であることが分かります。

農地法第5条によると、市街化区域の所有権を移転するには、地元の農業委員会に届け出、受理通知書を取得して、これを登記申請書に添付しなければなりません。売買契約書の特記事項の6項に、次のような記載があります。

「6.売主はその責任と負担において本物件引渡日までに農地法の第5条の届出を行い受領(正しくは「受理))通知書を取得するものとします。尚、買主は当該届出に協力するものとし、万一当該受領通知書が取得できない場合、本契約は白紙解約とし、売主は受領済の金員を無利息にて速やかに買主へ変換するものとします。」

この届出は、10月5日以降いつでもできるわけですが、10月29日までには、受理通知書の交付を受けていなかったために、登記ができなかったのではないかということが考えられます。

登記簿謄本をよくよく調べてみますと、本件土地を含む世田谷区深沢八丁目28番5の土地1,001平米の所有者であった東洋アレックス株式会社は、平成16年5月6日にこの土地を、28番5、19、20,21,22,23,24の7筆に分筆しています。本件土地は、このうちの28番5と28番19です。それ以外の5筆のうち、28番22の土地は、本件土地を仮登記した平成16年10月29日と同じ日に売買されているのですが、実は即日、すなわち平成16年10月29日に所有権移転の登記を済ませています。

とすると、本件土地に関する農業委員会からの受理通知書は、10月28日以前に取得済みであったということも、十分に考えられます。すると、本登記を平成17年1月7日にするという合意を交わした理由は、受理通知書交付の時期以外にあると考えなくてはなりません。

おそらく石川氏としては、小澤一郎個人が支払っている土地代金を、本来の姿、すなわち陸山会の資金繰りの中で支払える、言い換えれば小澤一郎個人が支払ったおを、陸山会が小澤個人に支払える見通しが立つと思われる時期を念頭において、年明け早々の平成17年1月7日を売買の日とし、その日に本登記をするようにしてほしいと申し入れ、売主の合意をとりつけたものと思われます。

市街化区域内の農地移転についての規定を見てみますと、農地法第5条第1項第3号の規定による届出によって農地を移転する場合の登記申請書に記載する登記原因の日付は、届出が効力を生じた日以降の日でなければならないとされています。つまり届出が効力を生じた日以降の任意の日を定めてよいということです。仮に届出受理日が、平成16年10月29日以前であったとしても、10月5日の売買予約に基づく売買の日は、届出受理日以降いつでも(1週間後でも、1ヵ月後でも、3ヵ月後でも)、当事者間で決めればいいということです。

売主および買主は、この考えに基づいて、2ヵ月余り後の平成17年1月7日を売買の日と定めたわけです。しがって検察は、売買日を平成16年10月29日と認定することができなかったというわけです。

ひょっとすると検察および審査補助人、弁護士、米澤敏雄氏および弁護士、吉田繁實氏は、売買日を平成16年10月29日と認定することができないということを、意図的に審査員に知らせないまま、東京第五検察審査会に検察起訴相当を議決させたのではないでしょうか。だとすれば、この事件は、文字通り史上空前の組織的な冤罪であるという、そら恐ろしい構造が見えてくるではありませんか。

こういう無理筋があえて行われえいることの意味は、実は裁判における決着はどうでもよくて、ひたすら小沢一郎氏を政治的に葬り去る「殺小沢」の組織的な陰謀であるとしか考えることができなくなります。

平成17年分の収支報告書を見ますと、事務所費として415,254,243円が支出されています。この中には、陸山会が平成17年1月7日に小澤一郎個人に支払った本件土地の売買代金342,640,000円、および仲介手数料や印紙税、固定資産税等を加算した合計金額が含まれています。つまり、陸山会が本件土地の代金を(小澤一郎個人に)支払ったのは平成17年1月7日であり、この日に小澤一郎個人と交わした確認書によって、本件土地は実質上、晴れて陸山会の所有するところとなったのです。

平成17年分の収支報告書には、資産等の内訳(土地)のところに、「世田谷区 342,640,000 17.1.7 476㎡」と記載されています。日付が平成17年1月7日になっているのも確認できます。

こういう経過を確認してみれば、平成16年においては、陸山会が本件土地を購入するということを前提に売買交渉等が進められたにもかかわらず、結果的には、実際の売買において、陸山会はなんら実質的な関与をしていないということが立証されます。

そしてその日の午後、小澤一郎個人を権利者とする所有権移転請求権の仮登記が行なわれたのです。

実質的に売買代金を支払ったのは小澤一郎個人である以上、この仮登記における権利者、小澤一郎個人は、不動産登記をすることができない権利なき社団である陸山会に、単に名義を貸したということではなくて、実質上の権利者になっていたのです。

すでに述べたように、小澤一郎氏への銀行融資の実行は、10月29日の午前中には間に合わず、午後にずれ込むことになってしまいます。決済を約束どおり実行できなければ、10%の違約金を支払わなければなりません。そこで取り急ぎ集められるだけのお金を集めて陸山会の口座に移し、足りない分は小澤一郎個人のお金を使ってでも約束どおり決済を実行できる準備を行ったのです。

石川知裕氏が10月28日に小澤一郎個人から受け取ったとされる4億円の現金について検察は不記載という罪をでっち上げていますが、実は小澤一郎個人の箪笥預金を、チェリス赤坂701号室の金庫の小澤一郎個人のスペースに移動しただけであって、陸山会が借りた借入金でもなければ、借受金でも預り金でもありません。

陸山会代表、小沢一郎とは別の、小澤一郎個人の4億円なのです。ですからこの4億円が、平成16年分の陸山会の収支報告書に記載されたら、それこそ正真正銘の虚偽記載になります。検察は、虚偽記載をしていないからけしからんと言って、石川氏を起訴する口実の一つにしたのです。

小沢氏は、この箪笥預金について、湯島の自宅を売却し、現在の深沢の自宅を建てたときに差額として残った2億円と、家族(妻)名義の預金口座からの3億6千万円、合計5億6千万円のうちの4億円であると説明し、この中に水谷からの不浄なお金など、1円たりとも含まれていないとしていますが、30億円の捜査費用と1年半の期間をかけても、そのような裏献金などは出てきませんでした。検察は家族(妻)名義の預金口座についても確認を済ませているはずです。

こうして検察は、小澤氏を不起訴にせざるをえなかったにもかかわらず、今だに公判前整理手続きの場で、石川氏の公判では裏献金の存在を立証する、と豪語しています。検察は、小澤一郎個人の箪笥預金をチュリス赤坂の金庫に移動しただけの石川氏を、政治資金規正法違反の罪を捏造することによって逮捕し、不記載という冤罪をでっち上げて起訴し、公判で有罪の判決を引き出して、投獄しようと考えているのです。なりふり構わない検察の冤罪つくりですが、狙いはもっぱら「殺小沢」の「階段」とすることにあるのです。

1万円札で3億4千万円といえば、重量は約34キロです。これを港区赤坂のチュリス赤坂から、渋谷区南平台の東洋アレックス株式会社まで、物理的に運搬するのは大変です。現金輸送車のコストも馬鹿になりません。したがって10月29日の取引は、この小澤一郎個人の現金を、物理的に運搬したり、振込みによって送金したのではなくて、司法書士が仕切るテーブルに関係者が集まって、その司法書士の「立会い」によって行われたものと考えられます。もちろん、現行、億単位の振込みができないことも、周知の事実です。

登記簿謄本によると、

平成16年10月29日、受付第77289号

平成16年10月29日、解除を原因とした6億200万円の根抵当権抹消登記

根抵当権者:株式会社みずほ銀行、債務者:東洋アレックス株式会社

平成16年10月29日、受付第77290号

平成16年10月5日、売買予約を原因とした所有権移転請求権仮登記

登記権利者:小澤一郎、売主:東洋アレックス株式会社

根抵当権抹消登記(第77289号)と所有者移転請求権仮登記(第77290号)が、連番の受付番号で行われていることを確認することができます。平成16年10月29日の立会いでは、次のような確認が行われています。

小澤一郎個人から、東洋アレックス株式会社に対する残代金全額の支払い

東洋アレックス株式会社からみずほ銀行株式会社へ債務全額の支払い

ここでは、20キロを超えるような現金の移動はありません。もちろんチュリス赤坂701号の事務所から、司法書士が仕切る立会いのテーブルまで、小澤一郎個人の現金を運ぶこともしていません。おそらく陸山会の預金口座から、小切手等を振り出して支払ったに違いありません。

ここで石川氏が、陸山会の口座に、あれこれの口座から預金を掻き集めて、陸山会の小切手で東洋アレックスに支払ったとしても、それは土地代金の支払者が陸山会であるということを意味することには絶対になりません。この間のやりくりのための資金移動は、もちろん収支報告書の記載事項ではありません。事後に相殺処理を済ませれば、小澤一郎個人から、東洋アレックスへの資金の移動しか残らないからです。仮に石川氏の記憶の中に、陸山会が支払ったという錯覚が残っているとしても、錯覚は所詮錯覚でしかありえません。

検察は、平成16年分の収支報告書に小澤一郎個人から借り入れた4億円が不記載であると言っていますが、4億円は、紛れもなくちゃんと記載されています。郷原信郎元検事が今年1月のサンプロ(出席者:田原総一郎石原伸晃渡部恒三岸井成格郷原信郎星浩枝野幸男)で、官報号外第223号の247ページを示して、小澤一郎個人からの4億円の借入金は、ちゃんと記載されていると説明したときの出席者の反応を見ておきましょう。

《引用開始》

田原総一郎:この土地を買ったという4億円が、どうも小沢さん側が言っているように銀行から融資を受けたんではないと。どうもこれは小沢さんの金ではないかと。

郷原:私も最初はこう理解していたんですね。2005年に土地を買ったということになっていたけれども、実際には2004年に買っている。2004年の土地を買った原資のことが、全然収支報告書に出ていない。だから不記載だ。だから石川さんは違反だ。ということかと思っていたんですね。ところがよく見てみると、2004年の収支報告書には小沢さんからの4億円の借入れの記載は、あるんです。

田原:えっ。ちょっと大変なことだ。何ですか?

郷原:2004年の収支報告書には「小澤一郎 400,000,000」というのは書いてあるんです。

田原:この4億円が全く書かれていない謎の金ではなくて。ちょっとアップしてください。郷原さんの持っている紙。どこに書いてありますか?

郷原:官報に掲載されている収支報告書ですけれども、ここに4億円は書いてあるんです。ただ問題は、これが小沢さん名義で銀行から借りたお金、これが小沢さんからの借入れになっているという意味なのか、個人から直接現金で出てきたものなのか、その辺の違いがあるということなのかもしれないです。(中略)

田原:それはだけど、事情聴取に応じると言ってる。星さんどう見る?

星: 事情聴取はあるんでしょう。しかし、さきほどの郷原さんの4ランクの話ではないですが、小沢さんのこの4億円のお金の原資が本当に個人的なもので、単なる単純な不記載なのか、それとも小沢さんが今まで西松建設の時に出てきた天の声なんかに絡んだゼネコンからの裏金で、なぜかと言うと、小沢さんは全部公開していると言うのに、公開していない4億円のお金があったわけですから、相当まずいお金だということは考えられるわけですね。そうするとそれは一体どういうお金なのかということは、まだ全然解明されてないわけですよね。

郷原:その4億円がまずいお金かどうかということもわからないんですよ、全く。だから小沢さんはそれはどういう性格のものなのかを説明すればいいと思うんです。

財部誠一:僕はやっぱり星さんと岸井さんにお尋ねしたいんですが、いま郷原さんの04年の収支報告書に4億円の借入れ記載がちゃんとあるというのはちょっと衝撃的で、新聞はないと報じていますよね。それはあまりにも事実と乖離し過ぎませんかね?

岸井:そうですね、そこは確認しなければいけないけれども、少なくとも04年も05年もあるんですよ。同じ4億なんですね。

財部:でも新聞は04年が問題だと言ってるじゃないですか。

岸井:だからその辺の捜査の仕方がなんか変だな、という所はね。それと今や本当に実力者ですから、小沢さんは。政治をあれしているわけですから。私もずっと取材していて感じるんだけど、田中角栄さん、金丸さん、竹下さん、つまり政治は力と思っていて、それは数だという所に必ずお金が絡んできてしまうわけでね。それでみんな失脚したでしょ。

田原:私は率直に言いたい。どうも毎日新聞を始め、日経新聞、読売新聞。検察の肩を持ち過ぎているんじゃない?

岸井:いやそんなことはないです。けっこうメディアというのは検察とは緊張関係ですから、いつも。

田原:どんどん報じているじゃない、小沢はおかしい、おかしいと。

岸井:おかしいんですよ、やっぱり。われわれの常識から言うとおかしいじゃないですか。全部報告しているはずなのに。(中略)

小川彩佳(女性キャスター):この資料(郷原氏の示した官報)が本当に衝撃的ですし、本当にもっともっとわけがわからなくなってきているんですけど。

《引用終わり》

なんということでしょう。要するに郷原氏以外のこの番組の出席者は、田原氏や岸井氏、星氏をはじめ、誰も収支報告書や登記簿謄本などの最も重要なエビデンスを、自分の目で見てチェックするという、マスコミ人としては最低限の事実の確認すらしないで、検察のリーク情報だけを鵜呑みに、適当に知ったかぶりをしているだけでしかないことが、ものの見事に暴露されているでありませんか。中でも岸井氏や星氏の台詞を聞いていると、「この野郎、ふざけるな!」と言いたくなってしまいます。

偽装工作のために、執拗に銀行融資を申し込んだ、という検察のリークを鵜呑みにしている人たちが、その融資金が小澤一郎個人を通して陸山会の手に渡っているという証拠を、収支報告書を自分の目で見て焙り出そうという発想は、まともなジャーナリストであれば本能的に浮かんでくるはずなのに、ここに集ったジャーナリストたちは、田原氏を筆頭に、郷原氏の指摘に、テレビの前で口あんぐりで驚いているのですから、それはもう醜態晒し以外の何ものでもありません。

そうです。この4億円は、平成16年10月29日の午後に、小澤一郎個人に対して実行された4億円の融資金が、そのまま陸山会に転貸されたものです。したがってここでもこの4億円の中に、水谷建設からの5千万円の裏献金などが紛れ込む余地など、寸毫もありえません。そのことは、これらの取引が銀行員の立会いの下に、現金を介在させることなく、銀行の応接室で行われることを考えれば、誰にも簡単に分かることでしょう。

検察や検察審査会は、わざわざ利息まで払って融資を受けたのは、疑惑隠しが目的であると言い募っていますが、それはとんでもない言いがかりです。石川氏が小澤一郎個人に代わってこの融資を申し込んだのは、多分平成16年10月5日の売買予約の日です。この日取り交わした売買契約書を早速提示、添付して、土地購入を目的として融資を申し込んだに違いありません。

この融資が12月29日の午前中に実行されていれば、この融資金を土地代金に充当する積もりであったのでしょう。ところがこの融資は、29日の午後になって、やっと実行されました。土地の購入代金に充当する予定でしたが、掻き集めた資金でなんとか午前中に決済ができたために、午後に予定していた登記にも間に合ったことで、この4億円の融資金は当面使途がなくなりました。

そこで、そのまま陸山会に転貸し、陸山会はこの借入金で、2億円の定期預金を2本組むことにしたのです。もちろんこれらの取引は、すべて銀行の応接室で、銀行員の立会いで行われたはずであり、したがって現金は、1円たりとも動いていないはずです。

検察も検察審査会も、この4億円の融資について、必要もない資金を利息まで払って借りたことは、執拗な偽装工作であるに違いないと決め付けていますが、これは政治資金団体の本来の機能を無視した、あるいは機能に無知な、とんでもない言いがかりです。多少の金利を払ってでも、いつ何どき何があっても資金需要を賄なえるようにしておくことこそ、政治資金団体の本来の基本的機能であるはずです。

検察は、本件土地が買えるだけの資金を調達できればそれでいい。銀行融資は偽装工作だと言っていますが、これこそ政治資金団体の本来の機能を無視したとんでもない暴論です。実は銀行の立場から見たとき、政治家ほど信用のおけない顧客はありません。政治家から見れば、銀行には全く信用が無いのです。「落選すればただの人」だからです。

ところが政治家の資金需要はきわめて不安定です。いつ何時解散総選挙があっても、文句は言えません。再選に向けて闘うしかないのです。だから不測のための資金を、常に確保しておかなければなりません。豪腕小沢一郎といえども、つねに銀行に利息を貢ぎながら、資金を確保しておかなければなりません。まして終始報告書を見れば分かるように、本件土地の購入時期の陸山会の財布は、はっきり言ってお寒い限りだったのです。

彼らの言い分によれば、小澤一郎個人が小澤一郎個人の名義で融資を申し込むために、小澤一郎自身の名前を自著し、小澤一郎自身の実印を捺印したことをもって、共謀共同正犯の状況証拠としているのですから、その思考回路には、あきれてものが言えません。